約1か月ぶりに観た『美女と野獣』は、佐久間仁さんビーストの進化が光る感動の舞台でした。高橋基史さんのガストンや初見の田邉真也さんルミエールなど、見どころ満載の回となりました。
2025年7月27日マチネ出演キャスト🌹🐾

佐久間仁ビーストの進化が止まらない | “愛せぬならば”はまさに魂の叫び
推しである佐久間仁さんのビースト。今回の観劇で、さらに深みを増した演技に圧倒されました。
前回から約1か月、その短期間でここまで役の中に沈み込むとは。静と動のコントラストがより鮮明になり、心情の揺れを繊細に表現されていました。1幕ラスト「愛せぬならば」は、まさに魂の一撃。吐息を交えたような歌い出しから、じわじわと感情が高まり、「愛なしには生きてはゆけぬ」と絞り出すように歌う姿は、もはや“演じる”を超えて“生きている”という印象すら受けました。静まり返った劇場の中、ただ一人、心をさらけ出すその瞬間に、自然と涙がこぼれました。
2幕冒頭、ベルを狼から助け出す場面でも、ビーストの心境が見事に表現されていました。彼女をそっと抱きかかえ、まるで壊れ物を扱うように丁寧に安全な場所へ移動させる所作。無骨な外見とは裏腹に、内側には確かに“優しさ”が芽生えていることが伝わってきて、胸が熱くなりました。
ベルに手当てをされるシーンでは、ちょっとした仕草や表情から、ビーストの不器用なときめきがにじみ出ていて、思わず頬がゆるみます。そして、フィナーレ。王子に戻った佐久間さんの立ち姿があまりにも堂々としていて、客席から思わず「王子…!」と心の中でつぶやいてしまいました。何度見てもイケメンすぎてびっくりする。佐久間ビーストの魅力は、回を重ねるごとに確実に進化しています。間違いなく、また会いに行きたくなるビーストです。
高橋基史さんのガストン|響き渡る歌声と知性を感じる冷酷さ
久しぶりに拝見した高橋基史さんのガストン。あらためて、ガストンというキャラクターの魅力と恐ろしさをしっかりと感じさせてくれる存在でした。
まず特筆すべきは、その圧倒的な歌唱力。とくに音を伸ばす場面では、美しいビブラートが劇場全体に響きわたり、高橋さんの歌の力に改めて引き込まれました。テンポの緩急をつけながらも、決して力任せにならない丁寧な表現が印象的でした。
演技面でも、他のガストンに比べて少し“利発そう”に見えるのが高橋さんの特徴です。ただの脳筋キャラではなく、ずる賢さや自分の思い通りに物事を進めたい野心が、ところどころににじみ出ていて、その分ガストンという人物の“怖さ”が際立っていました。特に印象に残ったのは、ベルに「怪物はあなたよ」と言われたあとの台詞まわし。感情を爆発させるというよりも、内側からじわりと滲み出る怒りと執念を感じるような、静かながらも背筋が寒くなるような一言でした。
高橋さんのガストンは、ただ威張っているだけの悪役ではありません。自信過剰で支配的で、そしてどこか狡猾。そんな一筋縄ではいかない“怖さ”をしっかり感じさせるガストンでした。
初見の田邉真也ルミエール|大人の落ち着きと新鮮なユーモア
田邉さんのルミエールは今回が初めて。落ち着いた大人の雰囲気がありながらも、場面ごとに茶目っ気も見せてくれて、まさに“品のあるユーモア”といった趣でした。特に印象的だったのは、バベットの羽を吸い込んでしまうシーン。これまでのルミエールたちは咳き込む程度でしたが、田邉さんは「ぺっぺっ」とあからさまに吐き出す演技で、思わず笑ってしまう新鮮さがありました。
そしてコッグスワースには、雲田隆広さん。個人的に雲田さんのコッグスワースが大好きで、今回もその可愛らしさに心をつかまれました。ちょこちょこと動き回る姿や、少し気弱で心配性な性格がにじみ出た演技に、何度もクスッとさせられました。
ミセス・ポット役の遠藤珠生さんは、張りのある高音がとても印象的でした。「美女と野獣」を静かに歌い上げる場面では、その美しい声にうっとりと聞き惚れました。そしてマダム・ブーシュ役の戸田愛子さん。ポットとの掛け合いが絶妙で、舞台に登場するたびに空気がぱっと明るくなるような存在感を放っていました。このお二人の組み合わせは、本当に“黄金コンビ”と言いたくなるくらい素敵な組み合わせでした!
おわりに|至近距離で味わった感動の舞台
今回は下手2列目という超至近距離での観劇でした。2幕冒頭、狼に襲われたベルをそっと安全な場所に移すビーストのやさしい動きや、「愛せぬならば」の静まり返った劇場に響く一節──「愛なしには生きてはゆけぬ」の入りには、まさに息を呑みました。目の前すぎて泣くしかなかったです。
その一方で、終盤の塔の上で歌うシーンは完全に真上を見上げる角度になってしまい、少し観づらかったのは惜しいポイント。ただそれを差し引いても余りあるほど、佐久間ビーストの感情が観客席へとダイレクトに伝わってきて、心が震えっぱなしの2時間半でした。



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