劇団四季の注目俳優・佐久間仁さんは、舞浜アンフィシアターで上演中の『美女と野獣』でビースト役として圧倒的な存在感を放つ一方、名作ロックミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』では激情ほとばしるユダ役にも挑戦。繊細さとエネルギーをあわせ持つ演技力で、作品ごとにまったく異なる顔を見せる佐久間さん。今回は、そんな彼の魅力に迫るべく、プロフィールや代表的な役柄、舞台で見せる圧巻の表現力をたっぷりとご紹介します!
佐久間仁さんのプロフィール・経歴
1983年3月5日生まれ、韓国出身の俳優・佐久間仁さん。幼い頃から舞台芸術に惹かれ、ソウル芸術大学で本格的に演技を学びます。磨き上げた表現力を武器に、2009年に劇団四季のオーディションに合格し、来日を果たしました。
翌2010年、『エクウス』で日本の舞台に初登場。その繊細かつ力強い演技で、当時から観客の心を掴んできました。言語の壁を乗り越え、日本のミュージカルシーンで実力を証明してきた佐久間さんは、まさに努力と情熱の人。舞台上では一貫して“魂のこもった演技”を見せ、作品に深みを与える存在として高く評価されています。
その後も主要作品に次々と出演し、劇団四季の看板俳優の一人として着実に地位を築いてきました。韓国と日本、二つの文化を架け橋に、今なお進化を続ける佐久間さんの歩みは、観る者の心を揺さぶります。
佐久間仁さんの身長は?
佐久間仁さんの身長は186cm。舞台上でもひときわ目を引く堂々たる体格は、彼の存在感をより一層際立たせています。そんな佐久間さんには、「ノートルダムの鐘」にまつわる印象的なエピソードがあります。
日本で本作の上演が決まった際、主演・カジモド役のオーディションを受けようと考えていたそうですが、「自分はカジモドを演じるには身長が高すぎる」と感じて応募を断念したと、あるインタビューで語っています。誰もが憧れる主役の座を、役との“フィジカルな適性”を真摯に見つめて見送る姿勢に、役者としての矜持とストイックさが垣間見えます。
その後、佐久間さんは同作で凛々しくも人間味あふれるフィーバス役を務め、その魅力を存分に発揮しています!
佐久間仁さんの出演作品一覧
・エクウス 馬
・エビータ アンサンブル
・思い出を売る男 G.Iの青年
・ジーザス・クライスト・スーパースター(エルサレムバージョン、ジャポネスクバージョン) アンサンブル、シモン、イスカリオテのユダ
・アスペクツ・オブ・ラブ ヒューゴ
・ノートルダムの鐘 フィーバス
・キャッツ ラム・タム・タガー
・劇団四季 The Bridge〜歌の架け橋〜 男性5枠
・美女と野獣 ビースト ←new
『美女と野獣』ビースト役|“愛せぬならば”に込めた想い
2025年6月に、「美女と野獣」ビースト役、デビューされました!半年以上前に出たパンフレットのビースト役の箇所に名前が追加されており、ファンは今か今かとデビューを待っていましたが、ついにデビュー!!
佐久間仁さんが演じる『美女と野獣』のビーストは、圧倒的な存在感と繊細な心の機微が共存する、まさに“生きているキャラクター”。最初の登場シーンでは恐ろしい姿に観客が息をのむものの、その表情や声の奥には、長い孤独の中で押し殺してきた感情の揺らぎがはっきりと見えてきます。
特に印象的なのが、1幕終盤の名曲「愛せぬならば」。このナンバーでは、怒りや絶望、自分自身への嫌悪、そして愛されたいという渇望が爆発するように歌われており、「気持ちそのものが歌になった」と感じるほどの迫真の表現力。魂の叫びのようなその歌声には、思わず胸が締めつけられます。
一方で、ベルに手当てされるシーンでは、それまでの厳つさが一転し、「きゃーっ!」という高めの叫び声を上げるという意外な一面も。ビーストの中にある子どもっぽさや不器用さが垣間見え、観客の笑いと共感を誘います。こうしたギャップが、佐久間ビーストをより魅力的にしているのです。
そしてラスト、呪いが解けて王子に戻った瞬間──そのビジュアルがまた圧巻。端正な顔立ちと高身長が映える衣装に身を包み、まるで絵本から抜け出してきたかのような美しさと品格に誰もが目を奪われます。
佐久間さんのビーストは、ただの“怖い野獣”でも、“かっこいい王子様”でもない。心の傷と向き合い、愛を知って変わっていく過程を丁寧に描き出す、まさに“物語そのもの”を体現する存在です。
『ジーザス・クライスト=スーパースター』ユダ役|佐久間さんが体現した苦悩と叫び
佐久間仁さんのユダは、まさに“激情の塊”。『ジーザス・クライスト=スーパースター』という舞台が持つロックのエネルギーと宗教的な葛藤、その両方を体現する存在として圧倒的な存在感を放っています。冒頭から張り詰めた緊張感を帯びて登場する佐久間ユダは、舞台全体の空気をグッと引き締め、観客を一瞬で作品世界に引き込みます。
ユダは単なる裏切り者ではなく、ジーザスへの信仰と不信、愛情と怒りの間で揺れ動く非常に複雑な人物。佐久間さんはその感情の波を鋭く、かつ人間味たっぷりに演じ分けています。怒鳴るでもなく泣き叫ぶでもなく、歌声の節々に込められた“抑えきれない想い”が痛いほど伝わってくるのです。
そして何よりも圧巻なのが、ラストのナンバー「スーパースター」。舞台の照明・音響・演出すべてがピークを迎える中、佐久間さんの歌声がそれらを超える迫力と切実さを持って響き渡ります。その歌声は、恨みや皮肉ではなく「なぜこうなってしまったのか」という苦悩と、未だ答えを探し続ける魂の叫びに満ちていて、聴いているこちらの胸に鋭く突き刺さります。
佐久間ユダは、“裏切り者”という一言では到底収まらない。時代に翻弄され、愛と信念の間でもがき続けた、ひとりの人間としてのユダを見せてくれるのです。その姿に、思わず「これはユダの物語だったのでは」と思わせられるほどの説得力があります。
『ノートルダムの鐘』フィーバス役|勇敢で誠実な兵士に命を吹き込む
佐久間さんは『ノートルダムの鐘』フィーバス役の日本初演キャストのひとりであり(もう一人は清水大星さん)、以来、長くこの役を演じてこられました。私自身これまでに5人の俳優によるフィーバスを観てきましたが、佐久間さんのフィーバスが一番、自分の中の“理想のフィーバス像”に近いと感じています。
戦場帰りのフィーバスは、表面上は軽妙で自信に満ちた軍人に見えますが、実は深い心の傷──戦場でのトラウマによるPTSDに苦しんでいる人物です。佐久間さんのフィーバスは、その繕われた明るさの裏側にある痛みを丁寧に表現していて、ふとした瞬間に訪れるフラッシュバックの苦しさや不安定さが、自然な芝居の中に滲み出ています。
また、上官であるフロローとの関係性も絶妙。仕事と割り切りつつも、序盤からどこか反抗的な空気をにじませる“反骨精神”の描き方が見事で、無自覚な正義感が少しずつ芽を出していく様子に引き込まれます。
そして何より印象的なのは、エスメラルダと出会ってからの心の変化。恋に落ちるまでの繊細な感情の揺らぎや、彼女のために自らの立場を捨ててフロローを裏切る覚悟、その過程をしっかり積み重ねて見せてくれるのです。後半、死の淵にあるエスメラルダを「生きてほしい」と必死に説得する場面では、佐久間さん自身の心が叫んでいるかのような切実さが表情にあふれていて、観ているこちらまで胸が苦しくなるほどでした。
佐久間さんの「ラム・タム・タガー」
佐久間さんは2018年の「キャッツ」東京公演より、ラム・タム・タガー役を演じていらっしゃいます。佐久間仁さんが演じるラム・タム・タガーは、“けだるさ”と“色気”が絶妙に融合した大人のタガー。『キャッツ』という作品において、タガーは演じる俳優によって全くキャラクターが異なる面白い役ですが、佐久間さんのタガーはアイドル系でもセクシー全開でもなく、どこか気だるく気まぐれで、けれども誰よりも人懐っこい──そんな絶妙なバランスを持った“余裕系タガー”です。
気ままな反骨キャラかと思いきや、仲間への目配せや観客へのアイコンタクトにはどこか温かさがにじみ、実は世話好きなのでは?と思わせる瞬間も。舞台上で次々と見せる表情の変化に、ただの“チャラ猫”で終わらない多面的な魅力を感じさせてくれます。
そして何よりも視線を奪われるのが、衣装から際立つその“脚の長さ”。どの作品に出ても「足が長い!」と話題になる佐久間さんですが、キャッツのピタッとしたボディスーツ衣装だと、そのスタイルの良さが何倍にも増して映えます。
歌声も安定感があり、「ミストフェリーズ」のシーンではラップ調のフレーズを軽快にこなしつつ、どこか茶目っ気のある雰囲気を纏っていて、まさに“舞台を遊んでいる”かのよう。自由奔放でありながら、作品全体のバランスを崩さずに魅力を最大限に発揮する、極上のタガーでした。
おわりに|どの舞台でも“人間の奥行き”を見せてくれる俳優
佐久間仁さんの魅力は、どの役でも“ただの登場人物”ではなく、その背景にある人生や葛藤までも観客に感じさせてくれるところにあります。ビーストでは愛を知って変化していく姿を、ユダでは信念と裏切りのはざまで苦しむ魂を、タガーでは自由奔放の裏にある優しさを──そしてフィーバスでは静かに傷つきながらも希望を求める男の強さと弱さを見せてくれました。
役ごとに全く違う顔を見せながら、どこか一貫して“人間の奥行き”を感じさせてくれる。それが、佐久間仁という俳優の最大の魅力だと思います。今後どんな役で観客を魅了してくれるのか、ますます目が離せません!



コメント
最近ジーザスクライストスーパースターを拝見して、佐久間仁さんを初めて知りました。
本当に本当にユダがハマり役でした。
表情や歌がうま過ぎで、こんなにユダに感情移入したのは初めてでした。
加藤迪さんジーザスとのセットだったのも本当に素晴らしかったです。
感動でポカーンでした。